目を醒ますと、ひび割れた暗闇が広がっていた。
映画で見たような青い色した照明灯のカバーが、ぼんやりと浮かぶ。
私は背骨の悲鳴を聞きながら、背を伸ばす。
明かりを着けると、皆一様にハッキリとした姿を現す。
軍令がスピーカーから流れた瞬間のように、物々が一斉に背筋を伸ばしたのかもしれない。
さあ私の時間だ、と急に偉そうな態度を取ってみる。
音を立てないように勢い良く襖を開けると、ゲージで丸くなっていた愛犬が驚いた顔をして私を見上げてきた。
あまりに素っ頓狂な顔に思わず吹き出しそうになるのを我慢する。
今は夜中の23時、誰も彼も幸せな夢を見ているはずなのだから、邪魔してはいけない。
部屋の明かりで示された物の輪郭にぶつからないように歩く。
目当ての個室に辿り着くと、座り込み、身体に溜まった毒と水を排出する。
個室から出ると、ぼやけた鏡に右半分だけ映った顔がこちらをじっと見ていた。
何となく、小腹が空いたので、帰りの道中に勝手な部屋に入る。
机の半分に様々な物が溢れている中で、緑色の袋を覗き込む。
緑色の袋の中は、更に透明の袋で幾つも小分けされていて、私はその中からフレンチトーストを手に取った。
同じ道を通る時に、私がここを通ったことを知っているはずの愛犬が、また素っ頓狂な顔をした。
お前、私がここを通ったのを忘れたのか?と問い質そうかとも考えたが、左手のフレンチトーストが咳払いしたので、愛犬に話しかけるのを止めた。
ゆっくりと部屋の襖を閉ざして、ストーブを着ける。
乱雑に散らかった、妖怪が出そうな机の上の薄埃を被ったパソコンのパスワードを打つ。
しばらく放っていたのが気に食わないのか、何度もやり直させられる。
「caps」のボタンが緑色に灯っていたのに気付き、謝り、改めて打ち込むと入ることができて、うちの子ちょっとチョロいのでは?と不安になる。
先ほど入手したフレンチトーストを一口、思いっきり齧る。
ネズミの胃袋にすーっと落ちていくのを、満足げに感じる。
これが、私が今先程に起きた、詰まらない出来事だ。
ふと、文字を見れば、850文字と表記されていた。
400文字原稿用紙なら、タイトルや名前を入れれば、3枚程度の分量で、当時の国語の先生も納得してくれることだろう。
如何にもな感じで、日常を描いて、投稿す。