夏の山、夏の空、夏の雲。
自動車を運転している最中、不意に自然の雄大さと己のちっぽけさが際立つ時がある。
そうした時、「ああ、このままこの空に溶けてしまいたい」と考える私がいる。
嫌なことばかりの現実から逃れたい願望が表出した、訳ではない。
その時の私の心情には、ネガティブな感情は一欠片もない。
何なら、常に現実から逃げているから、逃げている状態がデフォルトだ。
ネガティブではないのなら、ポジティブなのか、と言えばそうでもない。
雄大な自然の一部を自らの中に取り込みたい、と言う訳でもない。
ただ、溶けてしまいたい、とぽつり考えるだけだ。
心理学者なら、私のこの状態に何かしらの論理をもって説明できるかもしれない。
ただ、説明してほしいのは野暮な気がする。
こうして言葉にするのが、すでに野望なのかもしれない。
夏の山、夏の空、夏の雲。
夏の雨、夏の日射し、夏の雨の匂い。
夏、真っ只中、私の鈍い五感でさえ、夏はそこかしこに存在を現す。
夏だからだろうか?
夏故にだろうか?
そうだろうし、そうじゃないだろう。
野暮なことを書いた、夏の夜。