頭を軽く手で梳くと、針金のような細い毛が付いてきた。
その針金のような毛をしばしじっと見た。
この毛が私の頭の上に生えていたと俄に信じられない。
鏡を見れば、私の頭の上に黒く髪が茂っている。
しかし、抜け落ちた髪の毛は何時の間にか抜けていて、推測でしか語れない。
抜け落ちる瞬間をこの目で見た訳でないから、確信が持てないのだ。
抜け落ちる時に痛みがないから、今抜けたのか、と感じ得ない。
この手の髪の毛が間違いなく私の髪の一群の1本だった、と言えるのか?
しかし、現にこうして私の手の上にピンと伸びた髪が乗っている。
その手の上の細い髪の毛をゴミ箱へ落とす。
細い髪の毛は重力に逆らうことなく、するりと落ちた。
きっとゴミ箱を覗いてみても、もう見付けることはできないだろう。
よく分からないことをよく分からないまま、前後不覚に投稿する。