ある朝、ある人の誕生日であった。
その日、外に出るとそれらはあった。
上を見上げれば葉が黄色く色付いていた。
中には赤くなっているものもあり、上から赤、黄、緑の見事なグラデーションであった。
耳が冷たい空気に食まれながら、道を歩いた。
下を見渡せば田が黄色く煌めいていた。
稲穂が風に揺れながら、穂に付いた水滴に日の光が差し込んでいるのだろうか。
透き通る空気を肺一杯吸い込みながら、道を歩いた。
人の家の庭先を見れば柿が生っていた。
小振りな実を幾つもぶら下げた柿の木の枝が、少し庭から道の方へ迫り出ていた。
手を擦りながら、道を歩いた。
その隣にセイタカアワダチソウが咲いていた。
小さな花を幾つも震わせて、これ見よがしに咲き誇っていた。
寒さに急き立てられ早足になりながら、道を歩いた。
何処も彼処も黄色に染まっていた。
世の中が黄色に染まっていた。
この黄色に染まった日に産まれたのか、とある人を思い浮かべた。
世の中が黄色い染まる日、私は祝いの言葉をそっと送った。