2幕目。
2、事務所
照明、全体を薄暗い青。
先生N 助手、カギ!
助手N はいはーい、ちょっと待って……はい
音響、カギを開ける音、続いて、扉を開閉、電源スイッチが「入り」になる音
照明、全体を明るく。
音響、換気扇の回る音(小さく)
先生、上手から机の前まで。
先生 さあ、どうぞ!
恨む女、上手から先生の前まで
助手、上手から下手へ
先生 コーヒーを飲まれます?それとも、緑茶が良いですか?
恨む女 ……の……く茶で……ねがいします……
先生 ……緑茶、ですね?助手、緑茶とコーヒーだ!
助手N はいはーい、少々お待ちをー!
先生 あーそれと、お茶請けも!
助手N ……せんせーい?
先生 何だ?
助手N おかし、ありませんよぉ?
先生 何ぃ?菓子がないだとぉ!?何故、切らしているっ!
助手、お盆にコップを二つ持って、下手から下手側端へ。
助手、恨む女の前にコップを置き、先生の前にドンと置く。
恨む女 ……りがとうございます……
助手 いーえー……んん。先生、じゃあ、質問なんだけど、最後に冷蔵庫のシュークリームを食べたのは誰?
先生 ……助手じゃないのか?
助手 ボクの記憶じゃあ、昨日の3時のおやつに先生が食べていたよ?
先生 ……あー、そうだったか?
助手 そのとき、ボクは先生にかわいーく、オコした!「あーあ!せっかく、買った、シュークリームが、食べられちゃった!食べられちゃった!」って。
先生 ……あー、そうだったかもしれないな。
助手 そのとき!先生は!言った!「うるさい!また後で買ってくるから!」
先生 ……んんっ!そうだったとして、だ!それはシュークリームだろう?私は依頼主に出す!お茶請けについて聞いているんだっ!
助手 だから、そのシュークリームがお客さんに出すお茶請けだよ?先生が食べちゃったけど。ボクの記憶が正しかったら、先生は「最後にお菓子を食べた人がお菓子を補充する」ってルールを作ったよね?というか、いつも最後に食べるの、先生じゃん?でも、先生は「後で後で~」って言うばかりで、結局いつもお菓子を補充しているのボクだよ?今日は1人、お客さんが来るから、用意してたのに、先生が食べちゃったからオコしたのに、何で買ってないの?ねーねー何で?ねーねーねー!
先生 あああ!うるさいうるさいっ!ちょっと待ってろ……あ、済みません、少しお待ちを。
恨む女 ……え……気遣いなく……
先生、下手へハケる。
音響、物を漁る音。
先生N あー、ここら辺に置いた気がするんだが……ここか?……
助手 ごめんなさい、待っててください。
恨む女 ……の、本当に……いじょうぶです……
助手 まあまあ、もてなさせてください。
先生、下手から助手の前へ。
先生 ほれ、これで何か買って来い。
助手 ……たったのこれだけ?先生、この人の後にもお客さんが来るよ?これじゃあ足りないよ?ねーねー、もっと頂戴?ねーねーねー!
先生 あー!あー!分かった!待て!待て!(ポケットをまさぐる)あー……あ?……お。ほれ、これで良いだろ。ほれ、買ってこい。
助手 ……はーい。
助手、上手へハケる。
音響、扉の開閉。
先生 済みません、お見苦しい所をお見せしました。
恨む女 ……え、はい……あ、大丈夫です……
先生 全く、躾のなっていない助手で困った物です、ハッハッハ!あ、どうぞ。
恨む女 ……うも……
先生 それで!早速ですが幾つかトリックをご提案させてください。
恨む女 はい!
先生 名付けて!「カップラーメン殺人事件」!!!
恨む女 おお!期待で胸がはち切れそうなタイトルです。ハラショーです。カップラーメンを持ってくるセンス、ハラショーです、興奮します。鼻血が出そうです。
先生 そうでしょう!そうでしょう!まず、部屋に小型のカメラをセットします。そうですね、2週間くらい前から。理由は、「カップラーメンを食べられたときの証拠として残すために始めた」、としましょう。そして、やはり、クソ野郎はテーブルに置かれたカップラーメンをまた勝手に食べようとします!しかし、そこで予想外の出来事が!その小型カメラにはクソ野郎が殺される瞬間が撮影されたのです!撮影時間から、その日、あなたは別の場所にいたアリバイがあり、事件は空き巣による殺人事件と調査されるでしょう。
恨む女 おお……それで、そのトリックはどうやるのです?
先生 何、あなたの部屋と全く同じ間取り、同じレイアウトの、別の部屋を作るのです。そこにクソ野郎を呼び出します。引っ越したからお祝いでもしよう、とでも言えば良い。別の部屋の場所はあなたの住んでいる部屋から遠い方が良い。殺害後、死体と血の付いたカーペットをトランクに積み、カップラーメンの容器と箸もジップロックに入れ、あなたの部屋の物と入れ換えします。最後に、別の部屋で2週間撮り溜めした小型カメラの動画も今の部屋のパソコンにアップロードすれば、完璧です。
恨む女 なるほど、良いです、なるほど、カップラーメンを用意するところが良い、なるほど……でも……
先生 ん?どうされました?
恨む女 いえ、気になる点がありまして。あの、「カップラーメン殺人事件」なのですから、当然、カップラーメンを使ったトリックなのは良いです、それは良いです、でも、その、カップラーメンはちゃんと食べられるのでしょうか?いえ、確かに私はアイツが憎い、クソ野郎を殺したい、でもカップラーメンは悪くない、罪はない、そう罪はないです、カップラーメンを使ったトリックは最高、エスプリが効いてる、カップラーメンで恨みを晴らす、最高です。でも、カップラーメンに罪はない、悪くない、ラーメンを粗末にする奴は八つ裂きが妥当です、八つ裂きで我慢します、ラーメンを粗末にする奴は八つ裂きです、食べ残すのは悪です、八つ裂きにします。それで「カップラーメン殺人事件」に使われるカップラーメンはちゃんと食べられるのでしょうか?
先生 ハッハッハ!……あー、このトリックはまたの機会にしましょう!ええ、カップラーメンを使うまでもない、ブタのクソ野郎なのですからね!
恨む女 !そうですね、その通りです。はい、その通りです。カップラーメンを使うまでもないブタさんのクソ野郎です、その通りです。
先生 そうでしょう!そうでしょう!ハッハッハ……んあー、遅いな、助手の奴、何してんだ?
音響、扉の開閉。
助手N ただいまー
助手、コンビニで買ってきたお菓子を持って、上手から上手側机の近くへ。
先生 来たか!おかえり!待っていたぞ!
助手 はい、お菓子。どうぞ!
恨む女 ……ありがとうございます。
助手 ……(下手に向かって)あ、どーぞ、中に入ってください。
先生 ん?
助手 お客さんだよ……(もう一度、下手に向かって)どーぞ。
暗い男、手にビニール袋をぶら下げて、上手から上手側端へ。
先生 ああ、少しお待ちを。助手、椅子をもう1脚!
助手 ラジャ!
暗い男 済みません、ありがとうございます、済みません
助手、下手へハケる。
音響、物を漁る音。
助手、椅子と衝立て(ついたて)を持って、下手からくらい男の前へ。
助手 どうぞ!
暗い男 済みません、失礼します、済みません。
助手 調査の経過報告、聞きます?
暗い男 あ、その、済みません、えっと、その、あ、はい、済みません、お願いします。済みません。
助手 先生、調査資料、出して、説明して。
先生 む、今、こっちの方があるのだが……
助手 そっちはボクが対応するから、先生は仕事して!
先生 むう……少々お待ちを。
恨む女 ……い……
先生、下手にハケる。
音響、物を探す音。
先生N はて、ここに置いたはず……
音響、髪の束が崩れる音。
先生N あああ!
助手 もう、何してるのさ……ごめんなさいね、他の人がいるから気になるかもしれないけど、このように!プライバシー?の保護はするから!
暗い男 あ、その済みません、その、あの、済みません、実は、もう、その大丈夫になって、済みません
助手 え、大丈夫になった?あ……ごめんなさい、待ってて!
恨む女 ……いえ、あ、どうぞどうぞ……
助手 大丈夫になった、と言うと?
暗い男 ……済みません、もう、必要なくなったのです、済みません。
助手 必要がなくなった?
暗い男 ……はい。浮気、してました、済みません。
助手 あー、そうですか。
暗い男 3股、してました、済みません。
助手 あー、現場に居合わせた感じ?
暗い男 済みません、はい、3人で組み合ってました、済みません……
助手 ん?3人で?え、どういうこと?
暗い男 あ、えっと、その、済みません、えっと、その、済みません、その、あー、イチャイチャしてました、3人で、済みません。
助手 んん?3人で?イチャイチャ?……例えば?
暗い男 その、えー、その、済みません……あ、あーんをしていたり?済みません
助手 あーんをしていたり?
暗い男 えっと、済みません、耳かきをしてたり?
助手 耳かきをしてたり?
暗い男 えー、その、済みません、お話し?してました、済みません。
助手 あー、お話しね、うん、それなら分かる。すごく仲良くしてたんだね。
暗い男 済みません、そうですね、すごく仲良くしてましたね、済みません。
助手 ハグとかもしちゃったり?キャー!
暗い男 ああ、そうですね、ハグ、そうですね、してましたね、ある意味で、済みません。
助手 ん?ある意味で?
暗い男 ああ、その、済みません、何でもありません、済みません。
助手 そう?あーでも、それなら、一緒にお話しすれば良かったんじゃ?
暗い男 ……ふふ、あ、済みません。その、お話しも、その、しました、済みません、彼女と、あ、済みません、元彼女と、しました、お話しを、済みません。
助手 ……え、別れたの?
暗い男 済みません、「あなたは詰まらない」と言われて、済みません。
助手 え、ご結婚の話もあったよね?
暗い男 済みません、ご破算です、済みません。
助手 あらー、それは、ご愁傷様?
暗い男 あ、済みません、ありがとうございます、済みません……済みません、調査してもらったのに、無駄になってしまって、済みません。
助手 それは大丈夫!前払いで調査代は頂いてますし。
暗い男 済みません、なので、今日は、その、お礼と調査の打ち切りをお願いに来ました、済みません。
助手 分かりました!じゃあ、とりあえず、ここで待っててくっださい♪
暗い男 済みません、お忙しいのに、済みません
助手 いやいや謝らないで!元々はそちらが優先すべきなのに。仕事なんだから……そういえば、そのビニール袋の中身、何かな?……そのー、ちょっと、縄っぽく見えるんだけど?
暗い男 済みません、はい、縄です、済みません。
助手 あー、やっぱ、縄!あはは……えっと、済みません、何に使うご予定で?
薄い男 済みません、首を吊ろうかなって、済みません。
助手 ちょ!ダメだよ!ダメダメ!!
先生、下手から資料を持って、衝立ての前へ。
先生 あーあったあった、っと、おい、助手!何をしてる!こちらがほったらかしになっているじゃないか!
恨む女 あ!え!あ、大丈夫です、心配ないです、大丈夫です。ほったらかしにされても大丈夫です、いや、カップラーメンだと伸びてしまいますけど、今はカップラーメンはないので、大丈夫です。心配ないです。ごめんなさい、大丈夫です、その、大丈夫です。
先生 ほら!お前はこっちだ!
助手 先生っ!それどころじゃないよっ!
先生 ん?何だ?あ、済みませんね?これが今分かっている分です。
助手 先生!気付いて!気付いて!先生!
暗い男 ……済みません、その、実は、もう、必要なくなりまして……
先生 はい?
暗い男 済みません、浮気、してました。済みません。
先生 あー、現場に出くわしちゃいました?
暗い男 済みません、そうです、済みません。
先生 ……まあ、人生は色々です。これも良い経験だと思えば良いじゃないですか。
暗い男 済みません、そうですね、良い思い出にします。済みません。
先生 そうそう、良い思い出に。
助手 ダメダメダメダメ!良い思い出にしちゃダメ!思い直してっ!
先生 おい、依頼主が前を向いて、新しい世界へ羽ばたこうとしているのに、水を差す奴がいるか。いやー、済みませんね。
暗い男 済みません、そうですね、思い切って飛ぼうと思います、済みません。
助手 飛んじゃダメだって!何て言うか、その、生きてこそ意味があるー、のかどうかはボクは分からないけどー、そのー、とにかくダメだよ!
先生 ん?生きてこそ意味がある、そうだな。どんな苦難があっても、地べたを這いずって、泥水をすすってでも、生きていれば良いことがある。私なんか、地に足が着いていない宙ぶらりんな生活をしてますが、夢は諦めていません。必ずや、世紀の名探偵になってみせますよ!ハッハッハ!
暗い男 済みません、地に足は着かないと思います、済みません。
助手 着いて!地に足は着けて!浮かせちゃダメ!
先生 こらこら、挑戦者の夢を邪魔してはいけない。大丈夫ですよ!男は度胸!何事も物は試しです!思い切って飛んだ先に、きっと素晴らしい未来がありますよ!
暗い男 済みません、そうですね、物は試しですよね、済みません、はい素晴らしい涅槃(ねはん)が待っていると信じて、そうですね、済みません。
先生 涅槃?面白い表現をしますね。なるほど、涅槃、そうかもしれませんね。
助手 このトンチンカン!気付いて!重要ワードだよ!アレだよね?涅槃って、天国とかの意味だよね?天国と言えば?
先生 ……はい。
助手 はい、先生!
先生 天国へのカウントダウン?
助手 名探偵出るけど!今はエンタメはお呼びじゃない!
恨む女 ……っと、日清チキンラーメン?
助手 大喜利じゃないよ!今はラーメンのターンじゃないよ!ちょっと待ってて!
恨む女 あ、す、済みません、ごめんなさい、でしゃばりました、済みません、申し訳ありません、許してください、ごめんなさい。済みません、大人しくしています、ごめんなさい。
暗い男 はい……
助手 はい、本命!正解、正解を言って!
暗い男 済みません、閻魔大王です、済みません。
助手 地獄に落ちてるじゃんか!やっぱ後ろめたい気持ちあるじゃんか!!自殺なんて、しちゃダメだよ!
先生 ん?自殺?
暗い男 済みません、ばい、首を吊ろうと、済みません。
助手 思い直して!思い直そう?ね?
暗い男 済みません、真面目に、生きてきましたが、スパッと切られて、最早、未練もなく……済みません
助手 ああ!もう!先生!説得!説得して!
先生 ……ほう、未練もない……
助手 せ、先生?
先生 それ、事件にしませんか?
暗い男 ……はい?
助手 せんせーい?!
先生 いや、実は、そこの女性ととあるクソ野郎を仕留めよう、という話をしてましてね?
暗い男 ……はあ……?
先生 しかし、完全犯罪をしようとするのも、一苦労。怨恨(えんこん)の線で真っ先に彼女が疑われるでしょう。さっさと捕まってしまったら、名探偵の出番もない!それはよろしくない!
助手 先生、落ち着いて、正気に戻って!先生!
先生 私は正気だ!正常だ!しかしですね?もし、クソ野郎との関係が全くない、赤の他人が!事件に現れたら?そう!あなたが容疑者として捜査線上に浮かび上がったら!?そうなったら、面白い……!疑われていた彼女は釈放され、容疑者として、あなたが捕まる!
助手 先生、あなたは探偵なんだよ?殺人のトリックを教えるだけでも、問題なのにっ!自殺のほう助?までしちゃったら、探偵を名乗れないよ?そうじゃない、先生?
先生 うるさい!黙ってなさい!(咳払い)捜査は迷走します。何せ、クソ野郎とあなたとの接点は全くない、証拠不十分であなたも釈放されます。直後に!あなたが自殺します!警察の手痛い失策だ!ハッハッハ!体面を気にする組織ですからね。捜査は「被疑者死亡のまま書類送検」と結論、事件は幕を下ろされようとされていた……ところで!満を持して、名探偵である!私の登場!くぅう、格好良い!
助手 先生!ボクは探偵の助手をしているの!犯罪の片棒を担ぐつもりはないよ!
先生 お前は本当にうるさいね。私は事件を解決したいの!
助手 事件を解決するのに、人を2人も殺すって、本末転倒もいいところだよ!
先生 事件が起きないのがいけないんだ!探偵は事件があってこそ、その存在意義があるんだ!お前だって、乗り気だったじゃないか?
助手 いやいやいや!乗り気じゃなかったよ!最初から!ちょっと、様子見たかったし。あの女の人が怖かったし……事件にするのだって、準備したり、実際に殺す、ってなったら、もうちょっと歯止め?がかかるかなって思ったし。でも、この人はダメだよ!もう、ガチだもん!直ぐだよ、直ぐ吊るよ!そんな雰囲気出してるもん!今、止めないと、本当に危ないって!
先生 私だって本気だ!ちゃんとトリックも考えるぞ!
助手 本気の使い場所が違うでしょ!
暗い男 ……良いですね。
助手 え?
暗い男 あの人に振られ、お先真っ暗、神も仏もないと絶望していましたが、この命、誰かの役に立つというのなら、ご自由に……いえ、そうじゃないですね。
助手 え、あの?
暗い男 すべての人を救うことはできなくても、目の前の人を助けることはできる。名探偵の誕生に、彼女の恨みを晴らすのに、私の命が助けになるならば!これほど喜ばしいことはありません!是非、私の命を使ってください!
助手 ちょ、すごい前向きになってるけど、ちょっと待とう?あなたと関係のない人を殺すって話だよ?本気?
暗い男 済みません、私は本気です、済みません。
助手 うわあ、変な方向に振り切れちゃった……
恨む女 わ、私だって、本気ですっ!
助手 もう!待ってよ!えっと、その、期間限定カップラーメンは、まだあるんでしょ?食べられたのは1個なんでしょ?
恨む女 ……はい、まだあります。1ケース20食分、3ケース買ったので60食分あります。1日2食、30日分あります。本当は1日3食で食べたいのですけど、職場だと食べれない、ラーメンの時間は大事です、重要です、上司に呼ばれたら行かなくちゃいけない、そうしたら、麺にスープが吸い込み過ぎて、伸びてしまいます、アルデンテじゃなくなります、ラーメンの時間は大事です、時間が経つと食感もぼそぼそして悪い麺になります、ラーメンの時間は大事です、重要です、でも、あえて時間を長めに置くのもアリです。胃に優しい柔らかな麺になります、逆に1分30秒の、固めの麺も美味しい、ラーメンの時間は大事です、1分の差で麺の食感、のど越しが変わる、ミラクルです、ラーメンの時間は重要、その貴重なラーメンのっ!1個をっ!あのブタさんのクソ野郎がっ!
暗い男 済みません、素晴らしい熱意です、済みません。
助手 ああ!感化されないで!
恨む女 ……分かってくれますか?
暗い男 済みません、はい、分かります、済みません。私もラーメンが好きなので、済みません。
恨む女 !本当ですか!どのラーメンがお好きで?
暗い男 済みません、そうですね、最近はパスタ風ラーメンが好きです、済みません。
恨む女 パスタ風ラーメン、分かります。汁無しラーメンを洋風にする斬新な取り組み、ラーメンの新境地、細麺ストレートにトマトやナス、そしてチーズと見た目完全にパスタなのに、ラーメン、斬新です、そして、美味しい、ミラクルです。
暗い男 済みません、「ジャポネ」には行きました?済みません。
恨む女 !!はい、「ジャポネ」さんのラーメンをイメージしてました!あそこは一押しです。
暗い男 済みません、私も一押しです、済みません。
恨む女 Oh!同士よ!ラーメンの同士よ!私は今日という日を感謝します!ハレルヤ!
暗い男 ……同士、そう、私たちは同士!今日という日に感謝します!ハレルヤ!
助手 ふざけてる?ハレルヤって、ねえー、ふざけれるの?……ん?いや、でも、このままラーメン愛でまとまれば、殺人も自殺も止められる……?
先生 フハハハハ!素晴らしい!我ら生まれた日は違えど、目指す志は一つ!共に達成しましょう!
助手 先生?彼らはラーメンの同士であって、先生とは違うんじゃない?強引に事件にしようとしてない?そっとしておこうよ、そうした方が、幸せになりそうだよ?
先生 (人差し指を顔の前に)シッ!私は事件を解決したいの!……んん!では!これより!実際のトリックを考えるに辺り!彼の部屋に行きましょう!どういうトリックが良いのか!自殺する現場を見た方がイメージが湧きやすい!事件にしましょう!クソ野郎を地獄へ!さあさあ、行きましょう!行きましょう!
恨む女 ……うですね……きましょう、はい……
暗い男 済みません、行きましょう、済みません。
助手 先生が一番率先しているの、変じゃない?先生は探偵じゃなかったの?(小声で)……まあ、先生なら、ボク一人でどうにでもなるし……もう少し、様子見するかな……?
先生 ん?何か言ったか?助手?
助手 いーいーえー?
先生 ほら、行くぞ、助手!
助手 アイアイサー♪……さてさて、どうなることやら……
先生、恨む女、暗い男、助手、サーカスの一行が街中を練り歩くように、行進する。
先生、サーカスの団長のように、皆を先導しつつ、堂々と歩く。
恨む女、花形の踊り子のように、くるくる回りながら、先生の後に付いて歩く。
暗い男、ピエロのように、戯け(おどけ)ながら皆と関わりながら歩く。
助手、サーカスを観に来た子どものように、行進の一番後ろを付かず離れず歩く。
先生、恨む女、暗い男、助手、ぐるぐると陽気におかしく、舞台上を行進しながら、ぐるぐる回る。