私の頭上の空は曇り空であった。
遠方20キロ先では、ミルクを溢したような青空がぽっかり空いていた。
渇いた路面を快走しながら、私の頭上の曇り空と遠方20キロ先の青空の組み合わせにちょっとだけ感動していた。
真っ赤な席に誰ひとり座っていなかった。
巨大なスクリーンを独占しているようで、胸の高鳴った。
映画の予告が流れ始める3分前に人が入ってきた時、ちょっとだけ残念に感じた。
注文したホイール焼きハンバーグのホイールを店員がさっと切り裂いた。
私は恐る恐る切り裂いたホイールを広げると湯気がもわっと立ち上り、熱々のハンバーグがそこに存在した。
スマートフォンで撮影して、その熱々のハンバーグを食べて、ちょっとだけ神に感謝した。
日常のちょっとした小さな感情はきっとその瞬間しか感じ得ないだろう。
日々を生きて、同じ感情、同じニュアンスは多分ないのだろう。
その瞬間は確かに私の心が動いたと言えるが、「確か」と言えるのがその瞬間だけであるのがちょっとだけ惜しい。
ちょっとだけ、その僅かなぶれを気付けるだけ拾い上げたい。