映画「鬼滅の刃ー無限列車編ー」を鑑賞した。
当記事はその感想である。
ネタバレも含むので、まだ観ていない方はご注意ください。
全体の感想として「少年漫画らしいな」というものだ。
目線は子ども向けで制作しているように感じた。
噂にあったグロテスクな描写も想像していたよりは少なく、ある程度の配慮もあったのではなかろうか?
もちろん、グロテスクな場面、怖い表現はあったので、泣き出す子がいるのも分かる。
ただ、ある程度の分別がつく年齢なら問題ないだろう。
私の感覚だとR-12は妥当だ。
大人が楽しめる映画か、というと違うかもしれない。
「千と千尋の神隠し」のような映画のためのエンターテイメントとして作られた映画ではない。
言わば時流に見事に乗ることができた映画、というのが私の評価だ。
映画という枠で考えると名作とは言えない。
コンテンツとして考えれば、悪くない映画だった。
ある意味で時代を象徴する映画になっているが、一過性の消費のされ方に疑問も感じる。
ストーリーは原作に忠実だ。
漫画のコマ割りのような正確さで忠実に物語を展開していた。
忠実に展開し過ぎて、ちぐはぐしているように感じるところが散見する。
所々でギャグを入れてきているが、流れを止めている、場面に相応しくないように感じることが多かった。
漫画でも同じようなギャグは入っているが、全体の流れは決して止めていないし、緊張感は保てている。
原作を忠実に再現し過ぎるのも考えものだな、と感じた。
例えば、猪之助の扱い、ギャグキャラに特化し過ぎている。
確かに暴走キャラに違いないが、場面にあった表現にしても良かった。
特に煉獄さんが死んだ後のシーンで、猪之助がバタバタ暴れるが、物語としては一番シリアスなシーンのハズなのにギャグの割合が強い。
善逸の顔がギャグ顔だったし、悲しいはずなのに感情移入し難い。
あそこはもっと丁寧にシリアスにすべきだった。
漫画だときちんとシリアスだったし、悲しい気持ちになれた。
ただ、自分が原作通りに演出をすることになったら、大変に困ることになるだろう。
ここでオリジナル展開など入れたら大バッシングになる。
映画として面白く作れない、あくまでコンテンツ重視の映画と割り切るしかない。
また、ギャグ要素を大目に入れたのは、目線が子ども向けだからだろう。
ある程度の安心して観れるための緩急にギャグを入れているのではなかろうか?
コンテンツとして考えれば、適度にギャグがあるのは見飽きないための工夫かもしれない。
漫画の展開に忠実と言えば、脇役などの描写もそのまま再現している。
ただ、漫画なら読め込めたシーンも映画だと情報が多過ぎる。
そも無限列車は下弦の一の魘夢(えんむ)のハズだが、話題になっているのも盛り上がりが大きいのも終盤の上弦の参の猗窩座(あかざ)なのは魘夢が可哀想な気がする。
魘夢の見せ場ももちろんあるが、そも魘夢の主な攻撃手段が夢を介した精神攻撃だから、映画のモチーフとして今一つだったのは否めない。
魘夢をもっと際立たせるなら、最初に無惨とのやり取りを入れて欲しいが、アニメと被るのはまた何か違うのかもしれない。
魘夢が消えるシーンでの恨み節の演出はもっと凝っても良かったように感じた。
脇役の描写、結核の青年の心理描写はバッサリ切っても良かった。
あのシーンは確かに良いシーンだが、映画だと余分だ。
情報をもっと絞っても良かった。
個人的に気になったのは、炭治郎のキャラ付けだが、あれは真面目天然ボケキャラではないだろうか?
ツッコミキャラではない気がするが、これは解釈違いと流すところか?
煉獄さんや猪之助へのツッコミは何か違う気がしてならない。
魘夢の首を切ろうとするシーンでの猪之助と炭治郎のやり取りが正しいように感じる。
暴走キャラの暴走発言に真面目に返答する。
ボケをボケで殺しているのだ、本人たちは決して大真面目で言っているので笑わそうとする意図もない。
ツッコミのシーンは「ここは笑う所ですよ」という誘導が見えて、引いてしまう。
子ども向けであること、コンテンツであることで考えれば、分かり易いのは良いことかもしれない。
善逸というツッコミキャラはいるが、場面進行の観点からツッコミ役を担えるのが炭治郎しかいなかったのもあるのだろう。
背景の作り込みは凄まじい。
背景だけでも見る価値はあるだろう。
最初の墓場のシーンの墓石の作り込みたるや、熱量が半端ではなかった。
背景の描き込み量の多さが見所、と言えるかもしれない。
ちゃんと魅せる背景の見せ方だった。
自由にできたのがこういう背景の描写だったのかも、などと邪推してしまったりする。
音楽の入れ方は格好良いなとは感じるが、場面に合っているかはちょっと分からない。
ここら辺は好みの問題な気がするし、全然違うという訳でもない。
ギャグ要素との兼ね合いかな、というのが感じ方だ。
バトルシーンは流石に良い。
特に煉獄さんと猗窩座とのシーンはバチバチに格好良かった。
煉獄さんの想いもグッと来たし、むしろあそこをもっとフューチャーした映画作りで良かったのにとさえ感じた。
猗窩座戦を魅せるために魘夢の扱いの難しさがある。
魘夢が倒された直後に現れているから、魘夢の噛ませ犬感はどうしても拭えない。
「悪夢だ」と言った魘夢、コンテンツとしての扱いも悪夢のような可哀想な奴だ。
良くも悪くも「少年漫画らしい映画」と言える。
映画としては名作と言えないが、原作好きなら楽しめるのではなかろうか?
また美術の観点で言えば、アニメもここまでのクオリティになったか、という感動はあるので、ビジュアル好きは観ても良いかもしれない。
以上を「鬼滅の刃ー無限列車編ー」の感想とする。