13番目。
終盤に入る。
13、廃遊園地Z。(夕方)
小屋から出て幾日かが経つ。
あの日から雨は降らず、空は晴れ渡っている。
ウサギ、家と家の間に沈んでいく太陽をぼんやりと眺めている。
まだ来ない2体を待ちわびながら、ここ幾日のことを思い出していた。
(回想)
ウサギ ……本当に知っているの?
ケルト ほ、ほ、本当だ、よ。つ、月に、い、行ける、乗り物、だ、だって言ってた。……ぼ、僕をす、捨てた、人、が……
ウサギ ……ケルトくん、そこの場所を教えてくれるかな?
ケルト !いいい、いいよ!も、も、勿論だ、よ!
早朝、ウサギが橋の上から川を眺めている。
川は昨晩の雨で増えていて濁流と化している。
と、そこへ車が自分たちが通ってきた道からこちらへ向かって走ってきた。
車は地蔵前に止まるとドアから男の人が出てきて地蔵にお供えをし始める。
ケルト う、ウサギ、さん。お、お、おはよ、う
ウサギ あ、ケルトくんおはよう。今朝は良い天気ね
ケルト そ、そ、そうです、ね……あ、あの、あ、あそこ、で、と、と、止まって、いる、く、車、に、の、の、乗って、い、行こう?
ウサギ え?車に?……私はそんなに急いで行かなくても大丈夫だから乗らなくても良いよ?
ケルト く、く、車、に、の、乗った方が、ら、楽だし、ま、ま、町の、な、中だから、あ、歩いて、い、い、行くには、む、難しい、と、お、思う
ウサギ ……そう。じゃあトゲさんとモクタンさんを起こさなくちゃ
ケルト あ、あ、あの2、2体、には、も、もう、言って、あ、ある!く、く、車は、ま、また、来る、からす、すぐ、お、追いつく……と、思、う
ウサギ ……でも
ケルト いいからは、早く!ほ、ほら、ひ、ひ、人がの、乗ったよ!く、く、車が出ちゃう!
ウサギ ……分かったわ。ちょっとだけ待ってて?
地蔵 よう嬢ちゃん、おはよう。今朝は馬鹿に晴れたな
ウサギ おはようございます。ええ、良い天気になりましたね……お地蔵さんにお願いをしたいのですがよろしいでしょうか?
地蔵 おお、なんでい。言ってみ?
ウサギ、地蔵に言付けを預けて、礼を言いケルトと一緒に車に乗る 。
ウサギN お地蔵さん、怪訝な顔をしていたな……
車は元来た道を走り出す。
ウサギ、僅かに見える川辺の風景が流れ行くのを眺めている。
景色は次第に人の家々が現れ始め、程なく人が住む町へと変わった 。
それでも車はひた走り、ようやく止まったときには日も大分傾いていた。
ウサギ、荷台から降りるとケルトに尋ねる。
ウサギ 随分と車で移動をしたけど、トゲさんとモクタンさんの車はどこに止まるのかな?
ケルト ……さ、さあ?こ、こ、ここで、ま、待って、いても、と、と、到着、には、ま、まだ、かかる、から、さ、さ、先に、い、行って、そ、そ、そこで、ま、待とう、よ
ケルト、さっさと歩き始めた。
ウサギ、こんなに車で移動をするとは思っていなかったので、2体が迷わないか心配になったが、それでもケルトが伝えているから、トゲさんとモクタンさんで協力しあえばそんなに遅くはならないだろう、と思ってケルトの後を着いていく。
(回想終わり)
ウサギ、眼前にある月に行く乗り物を見上げる。トゲさんとモクタンさんはコレを見たらなんて言うだろうか?と考えながら。