朝、顎と口の髭をピンセットで丁寧に抜いた。
抜くと時々毛根に白い皮脂が照らついた。
口端の毛を引き抜くとうっすら血が滲んだ。
出掛けるために黒のワンピースを衣紋掛けから外した。
袖が無いので合わせに黒のスーツジャケットをチョイスした。
次いでに最近お気に入りの黒のブーツで黒尽くめでキメた。
靴を履いていると父に玄関の合鍵を作れ、と言われる。
私は実家の玄関の合鍵を持っていなかった。
父曰く、警察に注意されたとか言っていたが私は父が呆けたのではないかと疑っている。
ぽつと雨が降っていた。
運転しながら4月の一人芝居の台詞を繰り返すした。
オフィーリアの独創的な言い回しをテンポ30のメトロノームを聞きながら言った。
上土通りのコインパーキングに停めて、少し歩いた。
ぽつぽつと強まった雨脚を黒い雨傘で防いだ。
コツコツとブーツを高らかに鳴らした。
最初に『ドリプラ信州2023〜プレゼンテーション〜』でプレゼンを聞いた。
物語性があるプレゼンに楽しく聞けた。
人のやりたいを聞けるのは楽しい。
15時50分頃になったので移動したくなる。
トイレ休憩があるものかと油断していたが、プレゼン後に直ぐインタビューになってしまい戸惑う。
出入り口へ行くのにカメラ撮影をしている前を歩かなければならないのも動くのも躊躇う事由になる。
そうは言っても動かなけりゃならないか。
南無三、16時になったらそろり出て行こう。
黒尽くめだから目立つだろうが、なるべくそろりと気配を消して。
良さ気な区切りのタイミングでそそくさと、そろりではなく、そそくさと出た。
雨はとても弱く降っていた。
傘立ての鍵でロックを解除して、私の傘の柄を掴んだ。
上土通りのふれあいホールに足を運んだ。
サイケデリックで破天荒な音が大音量で流れていた。
味のりを頬張り、時に乱入して、馬鹿騒ぎした。
夜は更けていく。
帰りに台詞のおさらいをせねば。
今日の夕飯は何であろうか?
4月の或日の出来事の記録__