大阪府のバー「黒門カルチャーファクトリー」にて。
ぼんやりと天井を眺めている。
木目が人の顔に見えそうで見えないな、と一も二もないどうでも良いことを考えている。
側頭葉付近にずずっと地滑りをしているような血液の淀みを感じる。
ふと、火災報知器から伸びる引き紐の先端が揺れているのに気付いた。
引き紐の先端は弧を描くように、くるくるとか細くも揺れている。
部屋に流れる微弱な空気にたよやかに反応しているのだろう、と見当を付けてみた。
はて、あの引き紐の先端に手が届くだろうか?
寝転がったままの私は右手を天井に伸ばし試みてみた。
しかし引き紐の先端を握ることなど夢想でしかなく、二度三度くるくると虚空を掻き回した右手は、やおら元の布団の上へと落ちていった。
ぼうっと眺めているとまるで蜘蛛の糸のようだな、とか細く伸びる引き紐を見て考える。
あの引き紐を引っ張る時は部屋に煙が充満した時だろうから、ある意味で地獄極楽の境地、生死の境目で必死に藻掻いていることだろう。
私が助かるには、自分だけのことを考えないこと、だろうか?
ぼんやりと天井を眺めている。
雲が流れる行方を見る時のように、益のないことが止めどなく考える。
さて、側頭葉の地滑りをそろそろ止めようかね。