外は雨だったようだ。
部屋の天井を眺めては、目を瞑るを繰り返した。
今日は一度も家から出なかった。
耳に屋根を細かく叩く音が聞こえる。
雨粒が当たった音だ。
寝転んだ姿勢の私に親切に響く音だった。
ふと、一度も空を見ていないな、と気付く。
窓の内障子は開かれて、空を見ることができたのに。
何故か、一度も窓に目を向けなかった。
もしかしたら、この耳に響く音は私の内からの音なのかもしれない。
空虚な私が作り出した幻聴なのかもしれない。
この目で見ていないのだから、この耳に木霊する音が雨とは言えないのではないか?
鼓膜を振動しているこの音は、本当に雨だろうか?
ファントム振動症候群のような、私が勘違いした振動ではないだろうか?
ぽつぽつと私の鼓膜を細かく叩く、これは幻想なのか?
この目で一度も空を見ていない。
この耳に木霊した音が雨であると言うのは、私の経験則からだ。
しかし、経験則から導いたことが必ずしも正しいとは限らない。
果たして、この音は現実にあるのだろうか?
もし外は真っ青な晴天で、この耳を細道で反射する音は幻だとするならば。
私は晴れた日に部屋に籠もっていたことへの言い逃れをしているのだろうか?
いや、しかし、私にとっては外は雨であった。
もし外が真っ青な晴天だとしても、この耳の細道で反射した音を私は聞いたのだから。
最後まで聞こえたのであれば、幻も真であろう。
外は雨であった。
部屋の天井を眺めては、目を瞑るを繰り返した。
今日は一度も家から出なかったが、外は雨であることを耳が教えてくれた。
明日、外に出た時に、そっと空を見てみよう。
幻の雲が見えるかもしれない。
私にとっては真である、幻の雨雲に思いを馳せる。
ぽつぽつと今日も切断して、投稿する。