フキノトウが生えていた。
庭先の柔らかい土を除けて、ひょっこり初々しい頭を出していた。
隣にはフクジュソウが一株、黄色い花を咲かせていた。
3月中旬、春である。
寝て起きて寝てを繰り返してたら、春である。
ぽかぽかとした日差しが降り注ぐ、春である。
今年で35回目の春だ。
三色団子でも買って食べようか。
桜が咲く前に食い気が勝る。
今年は色々と変化する。
いや、意識してみれば、変化しない年はない。
私の根っこは変わらないが、変容していくのが常なのだ。
時代も環境も状況も私の身体も刻一刻と変わっていく。
私は私のまま、私ではない私へと変わる。
2022年は意識して変えようとしているから目立っているだけだ。
去年もフキノトウは芽を出していた。
今年もフクジュソウは花を咲かせた。
来年も春を告げてくれるだろう。
同じように捉えれば、同じ春が来た。
変わったと考えれば、変わった春が来た。
いずれにしても、同じでも変わっても、どのような春であっても、真ん中に私がいれば私の春になる。
悲しいニュースに耳にしながら、目の前の嬉しい出来事を見やる。
今年も春が来た、春が来たのだ。
気持ちを少し新たにして、背伸びした。
3月中旬、フキノトウが生えていた、35年目の春の出来事より。