雨上がり春は延びる野に山に。
と一句詠む程度には暖かい午後3時だ。
マスクをかける耳元をびゅうと風が吹き抜けてく。
健康診断をしに地元の開業病院に行く。
窓口に「健康診断をしたいのですが」と伝える。
そうすると「どのような内容ですか?」と尋ねられた。
健康診断にも何を知りたいかで項目が変わるらしい。
私は「レントゲンと採血と……あと一般的なものを?」とお願いした。
軽いアンケートに答えて、体温を計り、血圧を測りながら待った。
あれこれやっている内に直ぐに呼ばれた。
机の上にはディスプレイ画面が7つもあって驚きつつ席に着く。
先生も大まかな内容は把握していたからすんなり事は進む。
問診を済ませ、採血をした。
視力検査では思ってた以上に左目の視力が落ちていて、度の調整をすべきか悩む。
聴力検査は予め左耳の難聴を伝えたら、どの程度聞こえないのか丁寧に検査してくれた。
レントゲン撮影の部屋に通されると先に立ち方を指示させたあと、「先生が診察の間に撮りに来るから待ってて」と言われる。
個人経営の病院、レントゲン撮影も診察の間に済ますのか、と忙しい内部を想像する。
レントゲン撮影が長引いたらどうなるのか要らぬ心配をしていたが、実際にレントゲン撮影は1分で終わる早業であった。
健康診断を済ませて、待合室で待つ。
健康診断をしている時間よりも待っている時間の方が長く感じる。
一先ず一通り終わらせられて一安心する。
外は微かに雨粒を降らす。
白い壁をぼんやり眺めて待ち続ける。
もしかしてもう帰って良いのではないか、と猜疑心がもたげ始める。
病院の横を救急車が走り抜ける。
気付いたら待合室に私一人だ。
規則性のある何かの機械音が院内に響く。
あんまり待つようなら声をかけようか?
いやまだ数十分程度だ、しかしもう数十分経っている、どうしようか。
と考え始めた矢先、名前を呼ばれる。
簡単な説明を聞いて、手続き完了だ。
あとは1週間後に連絡待ちである。
首を長くして待つことにしようか。
夕方の影は伸びる野に山に、と呟き歩く。