山ほどある仕事を山ほど残して帰宅した。
限られた時間、少人数での人手不足、現行の機械の処理能力でどうしろというのだ、と項垂れて駐車場までの道を歩いた。
仕方ないとは言え、仕事を多く残してしまったことに罪悪感を覚え、申し訳ない気持ちになった。
受注量が減れば良いのだが、まだまだ先の話しだ。
気が滅入るのを明朗に感じながら、自動車で暖機運転をする。
冷たい冷気を吸い込みながら、一先ず、走り出した。
ぐるりと囲んだ山に朝の光は阻まれて、薄暗く緩やかなトーンで景色が静止していた。
東のある一点には、山吹色の光が山の縁で座していた。
昇る前の小休憩だろう、後もう数十分もすれば喧しくなる。
ずっと奥の方へ目をやれば、山は青藍に染上げられていた。
その上空には若紫色を丹念に映した雲の一団が浮かんでいた。
水彩で描かれたような淡い色合いの空気が、光と山と雲を調和させていた。
目を下に落とせば、枯れ草に霜が下りていた。
真っ白になった枯れ草は、白髪混じりの髭のようだ。
土の上にも胡麻粒のように霜が下りていた。
近景に枯れ草の霜があって。
遠景に静止した山の景色があって。
その中を点景としてボロボロの中古車を走らせる私がいる。
へこたれていても、日は昇り朝になる。
冷たい空気を纏ったまま、1月17日を迎えた。
綺麗だな、と感じても自動車は止めない。
とある朝の一幕、今日しか見れないが明日もある、日常の景色だ。