ストーブの焚かれた部屋の戸を開ければ、待ち構えていた冷気がすかさず私を覆い被さる。
寒い寒い、と小言を言いながら、これまた寒い廊下をすたこらと歩く。
ホッカイロのように部屋の空気を持ち運べたら良いのに、と小言が増える。
1年の内で一番寒い時期が2月、と小学校の理科で聞いた記憶がある。
立春を過ぎたとしても、まだ冬には違いないのだ。
春を実感するには、せめて梅でも咲かないと話にならない。
暖房でさながら南国の暖かさになった部屋でずっと寛いでいたい。
いっそ暑いくらいの自動車の中で冷たいお茶を飲んでいたい。
点在する私の憩いのスペースを強奪しようと冷気が私の外側をがっちり囲んでいる。
ずっと部屋の中に居れば、冷気も手出しはできない。
しかし、無情にも暖かければ喉が渇く。
喉が渇けば飲み物を飲み、飲み物を飲めば催す。
部屋の中で済ませてしまえば良いのではないだろうか?
ポータブル便器を用意して部屋の片隅にでも置いておこうか?
いっそ、空にしたペットボトルに出してしまおうか?
人間性を捨てることを検討し始めるくらい、寒いのが苦手だ。
ただ、寒いのが苦手ではあるが嫌いではない。
暖まった身体に冷たい空気はよく染み入って気持ちが良いからだ。
全体で言えば、3割くらいの気持ち良さだろうか?
その3割のお陰でなけなしの人間性を捨てずに済んでいる。
普通は検討はしないのも分かっている、つもりだ。
ストーブの焚かれた部屋の戸を開ければ、待ち構えていた冷気がすかさず私を覆い被さる。
寒い寒い、と小言を言いながら、これまた寒い廊下をすたこらと歩く。
まだまだ冷気と付き合わなければならないので、小言を少し減らす。
まだ寒い日が続く、皆様方、風邪にはお気を付けて。