右手50m先に街頭が二つある。
左手3mに緑色の看板がある。
寝ている踏切を自動車が通り過ぎる。
前方50m先の信号機が赤に変わる。
自動車が通り過ぎる。
前方3mの信号機が青に変わる。
自動車が2台通り過ぎる。
ひび割れた歩道を歩くのは私一人だ。
用水路の水の流れる高い音が静かに響く。
砂利を踏む音が殊更に鳴る。
砂利を踏むと殊更に鳴る。
指先は冷たいが、心臓は少し早まる。
斜めに道路を横切る。
自動販売機が立ち並ぶ。
少し立ち止まって、また歩き出す。
視力0.1で見る世界の輪郭はぼやける。
遠くの街頭の強い光が二重に見える。
暗闇は尚輪郭を隠し、真っ直ぐ歩けているのか分からない。
昔連れてってもらった市民プールは、平らに均されていた。
夜に見る空き地は巨大な虚のようだ。
木杭とロープの簡易な柵は容易に超えられるだろうが、その先に入り込むのは帰って来れない寂しさがあって、私を遠ざける。
道路の白線が頼りに歩く。
30cm横は1mの落差がある。
足を踏み外したら、怪我をする。
街頭の下、道路に「子供に注意」と大きく書かれている。
マンホール、簡易な横断歩道、赤いセメント。
朝に通る子供がきっといる。
いつの間にか白い息を吐きながら歩く。
古老な向日葵が頑固に立っている。
3m下を水が急いで流れ去る。
堰を通り過ぎる。
自動車は通らない。
すでに時刻は明日を今日にしている。
影は私を先導する。
幾通りの道を歩いていても、帰り着く道は同じになる。
ふと私の最後の道は何処にあるのか、影を追い越しながら考える。
もうすぐ私は帰り着く。
もうすぐ私は一所に帰り着く。
振り返れば、私一人しかいない。
とある4月の夜の散文。